基本のプロセス図 5 パターン(直列・並列・タイムライン・サイクル・分岐)を押さえても、実際の業務は「複数部門が並行して動き、条件で枝分かれし、例外も起きる」という複雑さを持っています。結論から言えば、複雑な業務フローを 1 枚で見せる鍵は「応用パターンの引き出しを増やし、表現したい構造に合わせて選ぶこと」 です。やみくもに箱と矢印を増やすと読み手は迷子になります。本記事では、基本を超えた応用 10 パターンを、適用シーンと PPT での作り方つきで整理します。これだけ揃えば、現場のほとんどの業務フローを「読み手が迷わない 1 枚」に落とし込めるようになります。

応用 10 パターン早見表

まず全体像です。「何を表現したいか」から逆引きで選んでください。

#パターン表現したいこと主な用途
1並列(フォーク&ジョイン)同時進行と合流複数チームの並行作業
2多段分岐(ゲートウェイ)3 つ以上の条件分岐審査・振り分け業務
3スイムレーン誰がやるか(責任分界)部門横断の業務フロー
4サブプロセス階層化・入れ子大きな業務の段階的詳細化
5ループ繰り返し・差し戻し承認・レビューの往復
6例外・エラー処理正常系と異常系の分離障害対応・クレーム処理
7合流・マージ複数の入口が 1 つに集まる問い合わせ一元化
8フェーズ分割(ステージゲート)大きな区切りと関門製品開発・PJ 推進
9クロスファンクショナル担当 × 時間の二次元全社プロセスの俯瞰
10ハイブリッドフロー+データ/システムDX・システム導入提案

以下、1 つずつ作り方とともに解説します。

1. 並列型(フォーク&ジョイン)

A が終わると処理が B と C に分かれて同時進行し、再び 1 つに合流 する構造です。並列に分かれたパスは、どこかの地点で必ずマージされるのが鉄則とされています。

        ┌─[B 設計]─┐
[A 起案]┤          ├[D 承認]
        └─[C 見積]─┘

適用シーン

  • 営業・開発・法務が同時に動く案件
  • 設計と見積りを並行で進める提案準備

PPT での作り方

  • 分岐点(フォーク)と合流点(ジョイン)を 小さな縦線または同色の小箱 で明示する
  • 並列レーンは上下に揃え、矢印の長さを合わせて「同時性」を視覚で伝える

2. 多段分岐型(ゲートウェイ)

YES/NO の 2 分岐は基本型ですが、実務では 3 つ以上に枝分かれする ケースが頻出します。複数の条件分岐を組み合わせて表現するのがセオリーです。

        ┌─[A ランク]→ 即決裁
[金額判定]┤─[B ランク]→ 課長承認
        └─[C ランク]→ 役員承認

適用シーン

  • 金額・リスク・緊急度による振り分け
  • 申請内容に応じた承認ルートの分岐

PPT での作り方

  • 分岐条件はひし形(または角丸の判定ボックス)に 1 つだけ 書く。条件が複数あるなら判定を 2 段に分ける
  • 各分岐の出口ラベル(A/B/C、Yes/No)を矢印の根元に必ず添える

3. スイムレーン型(責任分界)

応用パターンの主役格です。スイムレーン図は、フローに 「誰が(どの部門が)実行するか」という責任区分の軸を追加した 図で、部門横断の業務を可視化するのに最も適しています。

営業 │ [受注]──────┐
─────┼────────────┼──────
事務 │            └→[発注]─┐
─────┼──────────────────┼──
倉庫 │                  └→[出荷]

適用シーン

  • 部門をまたぐ業務フロー(受発注・経費精算・採用)
  • 引き継ぎ・受け渡しが多いプロセスのボトルネック発見

PPT での作り方

  • 横レーン(行)に部門、左から右へ時間が流れるレイアウトが基本
  • レーンを またぐ矢印 = 受け渡し なので、ここが多いほど属人化・遅延リスクの可視化になる

4. サブプロセス型(階層化・入れ子)

大きな業務を 1 枚に詰め込むと潰れます。そこで 1 つの箱を「サブプロセス」として畳み、別スライドで展開 します。BPMN でも複雑なプロセスは入れ子で表現します。

[全体]  受注 →【出荷処理】→ 請求
              ↓ 展開
【出荷処理】 ピッキング → 検品 → 梱包 → 発送

適用シーン

  • 全体像(1 枚)→ 詳細(章ごと)の 2 層構成
  • 50 工程ある業務を「3 大ブロック × 各詳細」に分解

PPT での作り方

  • 全体図では サブプロセスの箱に二重枠や「+」マーク を付け、「ここは展開できる」と示す
  • 詳細スライドの冒頭に「全体のどこか」を小さく再掲すると迷子を防げる

5. ループ型(繰り返し・差し戻し)

承認やレビューは一発で通らず 前工程へ戻る のが現実です。差し戻しの矢印を描けるかで、フローのリアリティが変わります。

[作成]→[レビュー]→〈OK?〉─Yes→[確定]
            ↑__________No______│

適用シーン

  • 資料レビュー・コードレビューの往復
  • 品質チェックの再検査ループ

PPT での作り方

  • 差し戻し矢印は 本流と色・線種を変える(例:本流=実線青、差し戻し=破線グレー)
  • 「最大 2 回まで」など回数の上限があるなら注記する

6. 例外・エラー処理型

正常に進む「正常系」と、トラブル時の「異常系」を 明確に分離 して描く応用です。正常系を一直線に、例外を下方向へ落とすと読みやすくなります。

正常 [受付]→[処理]→[完了]
                ↓ 例外
異常        [エラー通知]→[再処理]

適用シーン

  • 障害対応・インシデントフロー
  • クレーム処理・返品対応

PPT での作り方

  • 正常系は太く・濃く、例外系は 細く・薄く して主従を明確にする
  • 例外の戻り先(どこに復帰するか)を矢印で必ず示す

7. 合流・マージ型

複数の入口が 1 つの処理に集まる 構造。問い合わせチャネルの一元化などで頻出します。

[電話]─┐
[メール]┼→[受付一元化]→[対応]
[Web] ─┘

適用シーン

  • オムニチャネルの問い合わせ集約
  • 複数申請経路の統合受付

PPT での作り方

  • 合流点の手前で矢印の 色を 1 色に統一 し、「ここから先は同じ流れ」を示す
  • 入口が 4 つ以上なら、入口側をグルーピングして 1 段すっきりさせる

8. フェーズ分割型(ステージゲート)

長い業務を 大きなフェーズ(ステージ)で区切り、各区切りに「関門(ゲート)」を置く 応用です。製品開発や大型プロジェクトの定番。

│ 構想 │→◇→│ 設計 │→◇→│ 開発 │→◇→│ 展開 │
        Gate      Gate      Gate

適用シーン

  • 製品開発(ステージゲート法)
  • 投資判断を伴うプロジェクト推進

PPT での作り方

  • フェーズは背景色のブロックで区切り、ゲートは ひし形や信号アイコン で「ここで Go/No-Go を判断」と示す
  • 各ゲートの判断基準(何が揃えば次へ進めるか)を下部に 1 行で添える

9. クロスファンクショナル型(担当 × 時間の二次元)

スイムレーン(縦=担当)に 横=時間(フェーズ) を掛け合わせ、「誰が・いつ・何を」を一枚で見せる最上位の俯瞰図です。全社プロセスの説明に強い表現です。

担当\時間企画期実行期評価期
事業部起案推進振り返り
管理部予算化モニタリング精算
IT 部要件定義構築保守移行

適用シーン

  • 全社プロジェクトのプロセス俯瞰
  • 役員説明用の「業務とスケジュールの全体像」

PPT での作り方

  • 表形式(行=担当・列=時間)をベースに、セル間を矢印でつなぐ
  • 情報過多になりやすいので 1 スライド 1 メッセージ の原則で「この図で一番言いたいこと」を見出しに置く

10. ハイブリッド型(フロー+データ/システム)

業務フローに データの流れ・システム・帳票 を重ねる応用。DX・システム導入の提案で「人の動き」と「システムの動き」を同時に見せたいときに使います。

[申請(人)]→[承認(人)]→[基幹システム登録(IT)]→[帳票出力]

適用シーン

  • システム導入後の To-Be 業務フロー
  • 紙 → デジタル化の Before/After 提案

PPT での作り方

  • 人の作業・システム処理・帳票を アイコンや色で 3 種類に塗り分ける
  • システム化される範囲を点線の枠で囲み、「ここが自動化される」と一目で伝える

応用パターンを選ぶときの 3 つの問い

10 パターンを覚えても、選べなければ意味がありません。作図の前に次の 3 問を自分に投げかけてください。

  1. 誰がやるかを見せたい? → スイムレーン/クロスファンクショナル
  2. 流れの分かれ方を見せたい? → 多段分岐/並列/合流
  3. 大きな構造を見せたい? → サブプロセス/フェーズ分割

まとめ

プロセス図の応用 10 パターンは、基本 5 型の組み合わせと拡張で成り立っています。

  • 流れの分け方——並列・多段分岐・合流で「枝分かれ」を表現
  • 責任の見せ方——スイムレーン・クロスファンクショナルで「誰が」を明示
  • 構造の整理——サブプロセス・フェーズ分割で「大きな塊」を畳む
  • リアリティの付与——ループ・例外処理で「戻り」と「異常系」を描く
  • 領域の融合——ハイブリッドで「人とシステム」を重ねる

どれも目的は同じ、「複雑さを、読み手が迷わない 1 枚にする」こと。まずは自分の業務でよく使う 2〜3 パターンから手に馴染ませてください。図解の引き出し全体は PPT 図解パターン 30 選 で体系的に学べます。

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参考文献