「認知した人のうち、何人が最後に買ってくれたのか」——マーケティングや営業の世界で必ず問われるこの問いに、最も直感的に答えるのがファネル図です。結論から言えば、ファネル図の価値は「きれいな逆三角形」ではなく「各段に数値を入れて、どこで顧客がこぼれ落ちているかを一目で示すこと」にあります。 形だけ整えても、絞り込みの実態が見えなければ意思決定には使えません。本記事では、ファネルの 4 つの型の使い分けから、AIDMA / AISAS の当てはめ方、PowerPoint での作図方法、そしてコンサルが現場で使う「ボトルネックの語らせ方」までを一気通貫で解説します。

ファネルの 4 つの型 早見表

ひと口に「ファネル」と言っても、表現したい顧客導線によって形が変わります。まず全体像をつかんでください。

#表現したいこと主な用途
1パーチェスファネル逆三角形(絞り込み)認知 → 購買の絞り込み広告・Web マーケの集客分析
2インフルエンスファネル正三角形(広がり)購入後の継続・紹介・発信LTV・ファン化施策
3ダブルファネル砂時計(ボウタイ)型購買を境に絞り込み→拡散顧客体験全体の俯瞰
4営業ファネル逆三角形(商談段階)リード → 受注の商談進捗パイプライン管理・予実

以下、1 つずつ作り方とともに見ていきます。

1. パーチェスファネル(購買ファネル)

最も基本となる、認知から購買へと人数が絞り込まれていく逆三角形です。上から下へ段を進むごとに対象者が減るため、自然と漏斗の形になります。

 ┌───────────────┐  認知       100,000
   └───────────┘    興味・関心   30,000
     └───────┘      比較・検討    8,000
       └───┘        購入          1,200

AIDMA / AISAS を段に当てはめる

各段のラベルには、購買行動モデルを使うと説得力が増します。

  • AIDMA: Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)。マスメディア時代の古典的モデル。
  • AISAS: Attention → Interest → Search(検索)→ Action → Share(共有)。検索と共有を組み込んだネット時代のモデル。

自社のチャネルが Web 中心なら AISAS、店頭・テレビ中心なら AIDMA をベースにすると、現実の顧客行動と図がずれません。

PPT での作り方

  • 各段の幅を実際の人数比に近づけると、絞り込みの厳しさが視覚で伝わる
  • 段の右側に「人数」と「前段からの転換率(%)」を必ず併記する

2. インフルエンスファネル(影響ファネル)

購入して終わりではありません。購入した顧客が「継続 → 紹介 → 発信」と影響を外へ広げていくプロセスを、パーチェスとは逆の正三角形(下が狭く上が広がる形)で描きます。

       ┌───┐        購入者
     └───────┘      継続・リピート
   └───────────┘    紹介・推奨
 └───────────────┘  発信・拡散

適用シーン

  • サブスクリプション事業の LTV 向上施策
  • 口コミ・レビュー・SNS 発信を促すファン化戦略

PPT での作り方

  • パーチェスファネルと上下対称のデザインにすると、後述のダブルファネルへ自然につながる
  • 「ここを太くするのが今期のテーマ」と、注力する段を色で強調する

3. ダブルファネル(砂時計/ボウタイ型)

パーチェスファネルとインフルエンスファネルを上下に連結した砂時計型です。購買を「くびれ」として、左(上)で絞り込み、右(下)で再び拡散する顧客体験の全体像を 1 枚で見せられます。

4. 営業ファネル(セールスファネル)

マーケティングではなく商談の進捗を表すファネルです。リード獲得から受注までの各ステージに、案件数と金額を入れてパイプラインを管理します。

 ┌───────────────┐  リード      200 件 / 2.0 億
   └───────────┘    商談化       80 件 / 1.2 億
     └───────┘      提案・見積    35 件 / 0.7 億
       └───┘        受注         12 件 / 0.3 億

適用シーン

  • 営業の予実管理・着地見込みの説明
  • ステージ別の転換率から「どこを強化すべきか」を特定する

PPT での作り方

  • 「件数」と「金額」の 2 軸を併記する(件数は減っても単価で金額が逆転することがある)
  • 各ステージの標準転換率を併記し、平均より低い段を課題として赤くマークする

ファネル図を「分析」に変える数値の入れ方

ファネル図が単なる飾りで終わるか、意思決定の武器になるかは、数値の入れ方で決まります。

数値を入れる際の実務ポイントは次の 3 つです。

  1. 絶対数と率の両方を出す——率だけだと母数の小さい段に振り回される
  2. 期間をそろえる——同月・同四半期のデータで統一しないと転換率が嘘になる
  3. 業界・自社の標準値と並べる——「低い」と言うには比較対象が要る

各段の数値推移を時系列で追いたい場合は、ファネルの隣に棒グラフを添えると、構造(ファネル)と推移(グラフ)を補完できます。

PowerPoint での 3 つの作図方法

ファネル図を PPT で作る方法は、用途に応じて 3 つあります。

方法手軽さ数値の見せやすさおすすめ用途
SmartArt の反転ピラミッド◎ 最速△ 限定的概念図・ラフな説明
台形オートシェイプの積み重ね◎ 自由数値入りの本番資料
横棒グラフを funnel 風に加工◎ 正確厳密な比率を見せたいとき

迷ったら、本番資料は台形を積み重ねる方法が最も自由度が高くおすすめです。

  • 「挿入 → 図形 → 台形」を選び、上に行くほど横幅を広げて 4〜5 段スタック
  • 各台形の幅を人数比におおむね合わせると、ひと目で絞り込みが伝わる
  • テキストボックスで段名・人数・転換率を右側に整列(サイクル図同様、ラベルは図の外に出すと崩れにくい)

まとめ

ファネル図は、顧客導線の「絞り込み」と「広がり」を 1 枚で語る、マーケティング・営業の定番図解です。

  • 型を選ぶ——獲得なら逆三角形(パーチェス/営業)、ファン化なら正三角形(インフルエンス)、全体俯瞰なら砂時計(ダブル)
  • モデルを当てる——Web 中心なら AISAS、マス中心なら AIDMA で段にラベルを
  • 数値で語らせる——人数だけでなく転換率を併記し、ボトルネックを特定する
  • 作図は台形スタック——数値入りの本番資料なら最も自由度が高い

形をなぞるだけなら誰でも描けます。差がつくのは「どの段の転換率が低いか」を見抜き、打ち手を数字で示せるかどうか。まずは自社のデータを 1 つ、逆三角形に流し込むところから始めてください。

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参考文献