提案書でも社内プレゼンでも、聞き手が最も知りたいのは「いま何が問題で、どう解決するのか」です。資料の評価は、この**「課題と解決」をどう見せたか**でほぼ決まります。ところが現場では、課題をだらだら羅列して解決策との対応が取れていなかったり、いきなり解決策から入って「なぜそれが必要なのか」が伝わらなかったりする資料が少なくありません。本記事では、現役コンサル(具体企業名は伏せる)が提案設計で実際に使い分けている、課題と解決を見せる 5 つの定番構成パターンを、レイアウトと適用シーンごとに整理します。

1. なぜ「課題と解決」は型で見せるのか

課題と解決のスライドが伝わらない最大の原因は、課題と解決策の対応関係が崩れていることです。3 つの課題を挙げたのに解決策が 1 つしかない、あるいは解決策が課題のどれに効くのか分からない——こうした「ねじれ」があると、聞き手は論理を追えなくなります。

型を使う価値はここにあります。あらかじめ決まった構造に沿って情報を並べれば、課題と解決策が1 対 1 で対応し、聞き手は迷わず納得まで運ばれます。社内プレゼンの資料は「現状報告」と「提案(改善案)」の 2 部で構成するのが基本だと説く実務書も多く、課題と解決をセットで設計する発想は王道です(社内プレゼン資料は、必ず「現状報告」+「提案」で構成する - DIAMOND online)。

課題スライドは「不満リスト」ではない。解決策に着地させるための助走だ。挙げた課題のひとつひとつに、必ず対応する解決策が後ろで待っている——その対応関係が一目で見えるかどうかが、提案が通るかの分かれ目になる。

提案設計の勘どころ

以下では 5 つのパターンを、シンプルなものから順に見ていきます。全体の構成パターンの中での位置づけはコンサル現場で本当に使われる PPT 構成 5 パターン完全ガイドも併せて参照してください。

2. パターン①:課題 → 原因 → 解決策 → 効果(縦展開型)

最も基本かつ汎用的なのが、課題 → 原因 → 解決策 → 効果を上から順に展開する型です。「問題は何か」「なぜ起きているか」「どう解くか」「解いたら何が良くなるか」という、聞き手の頭に浮かぶ問いの順番そのままに並びます。

ブロック役割書くこと
課題問題の特定何が・どれだけ困っているか(数字で)
原因真因の提示なぜ起きているか(ロジックツリーで深掘り)
解決策打ち手原因に直接効く施策
効果見返り解決後の定量・定性メリット

この型のキモは、原因を挟むことです。課題からいきなり解決策へ飛ぶと「対症療法では?」と疑われます。あいだに「真因」を置くことで、解決策が原因に直結していると示せます。原因の深掘りにはロジックツリーMECEの切り口が有効です。

3. パターン②:As-Is / To-Be ギャップ型

As-Is(現状)と To-Be(あるべき姿)を左右に並べ、その差(ギャップ)を課題として定義する型です。「現状こうだが、本来こうあるべき。その差を埋めるのが本提案だ」というストーリーを、視覚的に一目で見せられます。

STEP 01

左に As-Is(現状)を置く

いまの状態を事実・数字で示します。ここは誇張せず、聞き手が「確かにそうだ」と頷ける客観情報に徹します。

STEP 02

右に To-Be(あるべき姿)を置く

目指すべき状態を具体的に描きます。To-Be が曖昧だとギャップもぼやけるので、できるだけ定量的に。

STEP 03

中央の矢印に「ギャップ=課題」を書く

左右の差そのものが解くべき課題です。矢印やブロックでギャップを明示し、「この差を埋める手段」として解決策につなげます。

As-Is/To-Be は、現状とありたい姿のギャップを可視化して課題を定義する定番の分析フレームで、提案の土台づくりに広く使われます(パワーポイントで As-Is/To-Be のギャップを可視化する - マネーフォワード クラウド)。左右対比のレイアウトは2x2・対比マトリクスの発想とも相性が良好です。

4. パターン③:Before / After 対比型

ギャップ型が「現状と理想」を見せるのに対し、Before/After 型は解決策を導入した前と後を対比します。すでに解決策が決まっていて、その効果を訴えたいときに最も刺さる型です。

  • 左に Before(導入前) — 課題が残ったままの状態。手間・コスト・時間を具体的に
  • 右に After(導入後) — 解決策適用後の状態。改善幅を数字で(例:作業時間 ○ 割減)
  • 対比は同じ指標で — Before と After は必ず同じ軸で比較し、改善が一目で分かるように

Before/After は「変化」を語る型なので、数字の前後比較が命です。定性的な「楽になります」ではなく、「3 時間 → 30 分」のように同一指標の差分で見せると説得力が跳ね上がります。

5. パターン④:理想先出しの TAPS 型

TAPS 法は、**To Be(理想)→ As Is(現状)→ Problem(問題)→ Solution(解決策)**の順で展開する、問題解決型プレゼンの定番フレームです。ギャップ型と要素は近いですが、理想を先に見せて期待感を作ってから現状の問題に落とす順番が特徴です。

要素読み役割
To Be理想まず「目指す姿」を見せ、ワクワク感を作る
As Is現状現実に引き戻し、理想との落差を感じさせる
Problem問題落差の正体=解くべき問題を定義する
Solution解決策問題を埋める具体策を提示し、行動を促す

TAPS は、理想と現状のギャップを問題として伝え、理想へ近づく解決策を示す流れで、相手に行動を促したいときに効果を発揮します。まず輝かしい未来を見せ、次に深刻な現状で危機感を共有し、最後にその差を埋める手段を提示することで、聞き手は自然と「やるしかない」という結論へ導かれます。

6. パターン⑤:解決策の選択肢比較型

課題に対して解決策が複数あり、どれを選ぶか意思決定してほしいときに使うのがこの型です。課題は 1 つに絞り込んだうえで、複数の打ち手を共通の評価軸で公平に比較します。

STEP 01

課題を 1 つに定義する

比較の前に「解くべき課題」を 1 文で固定します。課題がぶれると、各案の比較軸もぶれます。

STEP 02

評価軸を 3〜5 個そろえる

コスト・期間・効果・実現性・リスクなど、判断に効く軸を選びます。軸はMECEに、かつ意思決定者の関心に沿って。

STEP 03

比較表+推奨案で締める

各案 × 各軸のマトリクスで一覧し、最後に「推奨案はこれ・理由はこう」と言い切ります。比較しただけで終わらせないのが鉄則です。

比較表のレイアウトは2x2・比較マトリクスが基本形です。公平に並べたうえで推奨を明示する——この「公平さ」と「結論」の両立が、意思決定者の信頼を得る決め手になります。

7. 5 パターンの使い分け早見表

5 つの型は、提案フェーズ・聞き手・解決策の数で選び分けます。

パターン一言向いている場面
①課題→原因→解決→効果王道の縦展開汎用。迷ったらこれ
②As-Is/To-Be ギャップ現状と理想の差で課題定義課題を構造的に示したい提案
③Before/After 対比導入前後の変化を訴求解決策が決まり、効果を見せたい
④TAPS(理想先出し)未来→現状→問題→解決変革・新規企画で行動を促す
⑤選択肢比較複数案を公平に比較打ち手が複数あり意思決定が必要

迷ったらまず①を骨格に置き、聞き手の状況に応じて②〜⑤へ寄せていくのが安全です。なお、これらは排他ではありません。TAPS で全体を作り、解決策パートだけ⑤の比較表にするといった組み合わせも実務では頻出します。

8. 全パターン共通の NG

どの型を使うにせよ、根底にあるのは「課題は数字で、解決策は課題に紐づけて、最後は言い切る」という 3 原則です。型はこの 3 原則を実行しやすくするための器にすぎません。

9. まとめ|課題と解決は「型 × 紐づけ × 言い切り」

課題と解決のスライドは、提案の成否を分ける心臓部です。本記事の要点を整理します。

  • 5 つの型 — ①課題→原因→解決→効果、②As-Is/To-Be、③Before/After、④TAPS、⑤選択肢比較
  • 選び分け — 提案フェーズ・聞き手・解決策の数で決める。迷ったら①を骨格に
  • 共通の鉄則 — 課題は数字で示し、解決策は課題と 1 対 1 で紐づけ、最後は推奨を言い切る
  • 組み合わせ可 — TAPS × 比較表のように、型は重ねて使える

次の提案では、まず「課題と解決策の対応表」を手書きで作り、ねじれがないか確認してから型を選んでみてください。型より先に対応関係を固めることが、通る提案への近道です。

参考:社内プレゼンは「現状報告」+「提案」で構成する(DIAMOND online)As-Is/To-Be のギャップ可視化(マネーフォワード クラウド)PREP 法と SDS 法の使い分け(MindMeister)